ハヨ旦那転職列伝・弐 〜ハヨさん、東京行くってよ。〜
前回
ハヨネコの夫・通称ハヨ旦那は、UNKOな会社に勤めて早十年。
毎日気分もUNKOにまみれていた。
ブルーレットおくだけのような奥さんの存在が救いだったが、ある日、奥さんが東京に転勤するとほざき出した…?
ハヨ旦那は、妻を愛していた。
毎日家に帰って奥さんにベタベタとまとわりつくことが生きがいだった。
しかしハヨさんが東京に行ってしまっては、まとわりつくものが無くなってしまうではないか。
なに?衣装ポールにでもまとわりつけと?Why?何故東京へ?
奥さんことハヨネコことハヨさんは、東海地方に拠点を置くげっ歯類用飼料メーカーの大手・ジャンガリアンカンパニーで働く総合職であった。(※この設定は話をわかりやすくするためのフィクションです)
ハヨ旦那と結婚してしばしして、本社に異動し、大きなプロジェクトのメンバーに抜擢されていた。
しかしそのプロジェクトは混迷を極めまくっており、
様々なオッサンの思惑が錯綜し、メンタルの弱いオッサンは狂気に陥っている、まさに地獄絵図。
ハヨさんは2年近く、毎日オッサンにジャイアントスイングの如く振り回され、残業から家に帰っても寝るだけの生活を続けていた。
プレオッサンこと歳の近い先輩も続々と病み、中には会社を辞める者もいた。
更にハヨさんは悪いことに、狂気に陥ったオッサンに、出張先の東京で移動中においてけぼりにされる等、なかなかの理不尽を受け続けていたのである。
限界が来たハヨさんは、ついに「かいしゃにいきたくないニャン!」と完全にネコ化してしまい、精神科送りに。
今も通院は続いており、すっかりヤク漬けになっていた。
そもそもそのプロジェクトとは、
げっ歯類飼料メーカー最大手・ゴールデンインクと、ジャンガリアンカンパニーが合併することにより発生したものであった。
この合併により、ジャンガリアンカンパニーの本社は東海地方から東京に移ることになる。
ゴールデンインクはもともと東京を拠点としていたが、合併後の本社の体制には流石にジャンガリアンからも人をかなり呼ぶ必要があった。
ジャンガリアン本社では、使えそうな若者に東京行きの声がけが行われており、ハヨさんにも漏れなくその声がかかったのである。
「わたしはもういやなのです。」
ハヨさんは語る。
「ジャンガリアンもゴールデンも、今の体制を継続することしか考えていない。
合併後のヴィジョンを持ってプロジェクトに関わっているオッサンが少なすぎる。
それなら本社に行って、全体最適化を考えて働いた方が精神衛生的にも自分の成長の為にもいいと思うの。」
そもそもハヨさんは出自が関東なので、東京で暮らすことに抵抗はなかった。
持ち家も無く、子供がいるわけでもないので、名古屋に生活拠点を根ざしている他の社員と違ってしがらみも少ない。
「ハヨ旦那くんも、今の会社いやなんでしょ?」
「うん…」
「今後のお互いの働き方を考え直した方がいいと思うんだよね。
わたしも今の会社で絶対働き続けたいわけじゃないし、合併後の会社が良くなるとも言い切れないから、本社に行って見極めをしたいの。
これを機に時間をかけて、今後どうするかを私もハヨ旦那くんも考えたらどうかと思うんだ。」
ハヨ旦那はビールを片手に答えた。
「そこまで考えてるなら、ハヨさんを止めはしないよ。でも…」
自分の名古屋勤務はそんなにフレキシブルに変えられない。
つまり、当分は単身赴任だ。
ハヨさんにペタペタさわれなくなるのはかなしい。
いや、ハヨさんに会えなくなるのはさみしい。
永久ではないとはいえ、生きがいが失われてしまった。
俺もハヨさんを追って、東京に行くべきか?
しかし今の会社で東京に転勤するのは厳しい。
東京地区は売上の多くを占めている。あそこには限られた飛び抜けて優秀な人間しか行けない。
俺もそれなりにはやってきたつもりだが、10年近く働いてきて見てきた様子では、その枠に俺は入れそうにもない。
そもそも、名古屋地区は人材の層がso thinで、俺はずっと動かない可能性だってある。
転職するか?
でも、俺に何ができるだろうか…
次回、「ロンリーチャップリン」Coming soon...